民主主義という生き方を発明した人類は、重い責任とともに掛け替えのない自由を勝ち取った・・・

何を大事に思い、誰を愛し、そしてどのような世界を望むのかあなたの心の奥に眠る個性のコア、ここではそれを信念と呼びます。

この感情は生きる国の秩序を壊さない限り自由に設計することができます。ですが、その一方で破壊的なカルト集団による洗脳や国家ぐるみのプロパガンダのように人の信念に暴力で介入し、これを強制的に書き換える事例も多く報告されているのです。

オウム心理教による、テロリズム、旧統一協会による献金問題、北朝鮮による拉致問題などこのような洗脳の事例は上げたらきりがありません。

人の個性はなぜこんなにも、もろいのでしょうか？洗脳者がどのようなテクニックであなたの心を塗りつぶすのかその科学的なメカニズムをお教えしましょう。今回は人間を洗脳する方法についてご紹介したいと思います。

洗脳とは・・・

あなたをあなたらしめている信念や価値観を第3者が意図的に修正変更する行為です。心理学の世界では身体拘束や拷問、薬剤などの暴力的手段により、これを行う場合を洗脳、そして説得や議論などの比較的マイルドな手段を用いるケースをマインドコントロールと呼ぶことがあり、その定義が異なります。ですが他人を思いのままに操るという意味では同じ目的ですので今回はどちらも洗脳として扱います。

このような行為は人が社会的動物であるがゆえにあなたの生き方を根本から変える危険性があります。そして洗脳を最もうまく活用しているのがカルトと言われる破壊的な宗教団体です。最も悲惨な事例としては、日本で発生したオウム心理教の一連の事件が挙げられます。

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この集団は松本智津夫によって1980年代に設立されヨガやチベット、仏教、キリスト教などの宗教的要素を組み合わせた複雑な教義を持っていました。

その理想は閉塞感と己れの限界に打ちひしがれた、当時の若者に受け入れられ、マスコミもそして日本人の多くも最初はこれを好意的に受け止めます。ですがこの集団は本質的に狂っており、信者の獲得と教育にあたり様々な洗脳のテクニックを活用していたのです。

いくつか例を上げると幻覚剤を用いた人為的な神秘体験、外界からの隔離と徹底した情報統制、世紀末思想による恐怖感のすり込みなどなど・・・

そして少しずつ過激さを増していった、この集団は最終的には民主主義に牙を向くまでにその自我を肥大化させます。そこから先は皆様よくご存知の通りでして、信者は文明社会に背を向けて山梨県のとある村に小さくそして歪な国家を設立し毒ガスを製造してばらまきました。

他にも安倍元首相の銃撃事件で注目を集めた旧統一協会も信者の獲得にあたり合宿と称した、外界情報のシャットダウンや先祖の因縁という恐怖心を利用して献金させるというテクニックを用いています。

海外でも似た事例はあり、例えばアメリカで活動していたヘブンズゲートというカルト集団はヘール
ボップ水星を追って襲来する宇宙船に魂を乗せて地球を脱出するために集団自殺を行い、組織もろとも1997年に消え去りました。

この集団もまた信者の隔離と集団生活、世紀末思想などのテクニックを駆使し個人の信念と思想に介入しています。

これらの例から分かるように洗脳は確かに可能であり、その手段にはいくつかの共通点がありそうです。

ではどのようなプロセスを経て人格を上書きするのでしょうか？ここからはその科学的なメカニズムを考えてみましょう。

MKウルトラ計画

洗脳の科学と言うとアメリカで実施されたMKウルトラ計画を紹介しないわけにはいきません。これは1951年から1972年にかけてCIAが実施した最高機密のミッションであり洗脳と心理操作の技術開発を大きな目的としています。

このプロジェクトにおいては本人の同意がないままに数千人以上の人々が実験に動員させられたとされており、LSDのような幻覚剤を用いた洗脳術、睡眠薬や催眠術を用いた記憶の回復術と自白の促進電気ショックやロボトミー手術による記憶の消去術、殴打して気絶させる効率的な方法の開発など様々な人体実験が実施されました。

この事例以外にも国家ぐるみのプロパガンダやカルト集団の洗脳事例からそのメカニズムが部分的に
明らかにされています。まず大事な事実を最初に述べておきましょう。洗脳はあなたの人格を永久に変えるほどの力を持つわけではありません。

例えば朝鮮戦争において中国共産党は捕虜に対して共産主義の思想を植えつける洗脳を実施しています。このケースにおいては捕虜の外的な行動は制御できたもののその信念と思想が永続的に変わったのは、わずか数名であり開放後に洗脳が解ける例も多かったのです。

つまり、マスコミ報道で見かけるような数年も続く洗脳の恐怖はあくまで例外です。このような不幸な事例は被害者が元々特定の思想や信念に好意的であり、それが洗脳のプロセスで強化され、さらに洗脳が長期間継続して行われたため驚異的な効果が発揮されたと推測されます。

3つのプロセス

具体的な洗脳のテクニックについても解説しましょう。洗脳とは心理学の知識を相動員した説得、誘導の技術と見なすことができ、過去の成功例には多くの共通点があります。

心理学者エドガー・シャインは中国共産党の洗脳事例を調査し、そのプロセスを3つに分けました。

1961年に報告された古典的な研究ではありますが、洗脳のコツと本質がここに詰まっています。

まずは、解凍これは洗脳の第1段階でありここであなたの現実は大きく揺さぶられそして壊されます。具体的には貧しい食事、睡眠不足、厳しい尋問、拷問、独房での監禁などの暴力的なプロセスを経てあなたのアイデンティティが徹底的に破壊されのです。

幻覚剤で神秘体験を経験させる行為もこれにあたり、脳を真っ白に洗う洗脳の下準備と言えます。多くのテクニックが開発されていますが中でも特に人里と離れた施設への監禁と睡眠妨害は非常に効果的であり破壊的カルト集団の一部が愛用してきました。

このような行為により現実に対するあなたの見方は大きく混乱し常識に反するような概念すらも受け入れやすくなるのです。

次が変革、解凍のプロセスを経て個性を喪失した脳はいわば真っ白なキャンバスですが、ここに新しい信念を流し込むのがこのステップです。あなたが生まれ変わる瞬間とも言える劇的な段階ですが、その手法は至ってシンプルであり先に紹介した。

解凍のテクニックであなたの現実に揺さぶりをかけつつ、すり込みたい教義や新しい信念が映像や音声などを用いて繰り返しインプットされます。その形式は様々ですが神聖な宗教的儀式の一環として行われることもあればセミナーや勉強会のような特別な場が準備されることもあります。

この段階は見方を変えると催眠のステップと表現することができ、用いられる映像や音声、セミナーの内容には反復単調リズムといった人が誘導されやすい要素がてんこ盛りにされています。この点についてはオウム心理教における修行するぞ修行するぞ修行するぞの連呼といったエキセントリックな集団催眠を思い出す人も多いことでしょう。

そして、最後が再凍結これは植えつけられた新しい信念が過去の古い価値観により再浸食されることがないようにメンテナンスと強化を行う段階です。よく使われるテクニックとしては古参のメンバーとペアを組まされて、その行動や信念を見習うように教育されたり新しい名前を与えられることで過去のあなたと決別しやすい環境が整えられたり新メンバーの勧誘、任務に従事することであなたの中で芽ばえつつある新しい信念が確信へと変わるように誘導されます。

あなたの人格が新しい個性へと移行する段階でありこれらのプロセスを経て新しい思想はより強固に個人へと定着するのです。

これら一連の行為は強制的説得と呼ばれ洗脳の複雑なプロセスを見事に説明づけた古典的アイデアとして多くの心理学者に受け入れられています。また情報の制限と社会的な孤立という2つの要素は洗脳の効率化に有効でありカルト集団が出家を強要したり、都会を離れて集団生活を営むのもこれに
あたります。

多くの場合洗脳の効果と持続時間は限定的ですが中にはその効果が数年以上も続き人生を大きく狂わせる例もあります。それではなぜこのような感受性の違いが生まれるのでしょうか。この点については、個人の性格が関係している可能性も考慮すべきです。

例えば316名の人物を対象にしてその説得のされやすさを調査した研究事例では内向的で社会に抑圧され、そして不安を抱えている人ほど群衆に従い権威のある人物に説得されやすい傾向が確認され
ました。このような人物像はいわゆるカルト集団にとっては非常に魅力的なターゲットですのであなたが当てはまる場合は十分に注意する必要があります。

まとめ・・・

最後に敵の攻撃手段をまとめておきましょう。洗脳を意図する人物は、最初にあなたを社会から孤立させ、あらゆる手段を用いて現在のあなたを否定します。ついでその人物は呆然実質のあなたに新しい信念や競技を流し込みます。

最終段階でその人物は植えつけた新しい信念をあなた自身の意思で生活の一部とするようにしかけてくるのです。これに該当する環境特に最初のきっかけとなる隔離された場での自己否定が準備されている場合、そこはすでに異常な空間と言えます。

大事な個性とあなたのこれまでの歴史を守るためにも直にそこから逃げてください。