「バイカラー・クラッド」と呼ぶ新技術を導入。
ニッケル黄銅と白銅、銅を組み合わせるもので、財務省が公開したイメージを見ると、銅を白銅でサンドイッチ→これをニッケル黄銅にはめ込む──というもののようで、外観はニッケル黄銅と白銅の2色に見え、その中身は3層になっているようです。ATMや自動販売機などでは偽造硬貨を合金の電気伝導率などから判別しているので、素材を複雑に組み合わせることで、より偽造防止効果を高めるようです。
新しい五百円貨幣の発行開始日
偽造抵抗力強化の観点から素材等を変更して発行する新しい五百円貨幣については、2021年11月1日(月)より発行(日本銀行から金融機関への支払)が開始されます。
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新500円玉の特徴
まずは新500円玉が現行の500円玉と比べてどう変わったのか、改めて見ていきましょう。
【1】バイカラーな見た目
現行の500円玉の素材はニッケル黄銅のみで見た目1色なのに対し、新500円玉は円の外側と内側で素材が異なるため、2色に見えます。
新500円玉の外側のリング部分は従来の500円玉と同じニッケル黄銅。いっぽう内側のコア部分は2枚の白銅で銅を挟んだ3層構造となっています。ニッケル黄銅のリングの内側に、白銅・銅・白銅の3層の円板をはめこんでいるのです。
この技術を「バイカラー・クラッド(二色三層構造)」ということから、新500円玉は「バイカラー・クラッド貨」とも呼ばれています。
【2】貨幣の側面に「異形(いけい)斜めギザ」が入る
貨幣の側面にある斜めのギザギザにも違いがあります。現行の500円玉のギザギザは等間隔で均一であるいっぽう、新500円玉の一部(上下左右)は広がったような形のギザギザがあるのが特徴です。じつはこの「異形斜めギザ」という技術が通常貨幣(大量生産型貨幣)に使われるのは、世界初なのだそう。
【3】ふちの溝に微細文字
ふちの溝をよく見ると、非常に小さな文字で「JAPAN」または「500YEN」の文字が入っています。
【4】「500」の中にある潜像
従来の500円玉を下からのぞき込むと、「500」の「00」の中に「500円」という文字が浮かび上がるのが見えるでしょう。これを潜像といい、新500円玉にも同様のものが見えます。ただし新500円玉は上から見ると「JAPAN」、下から見ると「500YEN」と出てきます。見方によって違う文字が浮かび上がるという、より高度な潜像が施されているのです。
【5】微細点と微細線
転写などの偽造防止のため、従来の500円玉よりもより細かな点、線の模様が随所に施されています。線は髪の毛よりも細く、現状の金属彫刻における最先端技術が使用されています。
なぜ新500円玉はあまり流通しないのか
最新の技術が取り入れられ、工夫が凝らされている新500円玉。財務省の発表によると、2021年度の新500円玉の発行数は2億枚、2022年度は3.65億枚を予定しており、徐々に流通量を増加していくとのことです。
とはいえ、新500円玉はまだ十分に行き渡っているとはいえない状況。キャッシュレス化によりそもそも硬貨を使うシーンが限られてきているというのも浸透しない理由のひとつですが、最大の理由は「使えない場所が多い」ということでしょう。自動販売機や券売機などで、未だ新500円玉が使えない機械が少なくないのです。
すでに発行が始まって数ヶ月となりますが、対応が遅れているのはなぜでしょうか。
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新500円玉への対応が遅れがちな理由2点
【1】費用・コスト面
自動販売機や券売機、両替機などには、投入された硬貨を正しく認識・選別する機器であるコインセレクター(硬貨選別機)が入っています。新しい硬貨を識別できるようになるためには、このコインセレクターを交換・更新するか、販売機そのものを取り替える必要があります。しかし交換費用は最低でも5万円、機械ごと取り替えになると数十万はかかるといわれ、これが事業者にとって大きな負担となってしまうのです。
駅やバスといった公共交通機関では、乗客の利便性を考え導入するところも増えていますが、近年のキャッシュレス化もあり「現金対応のためにどこまでコストをかけるべきか」という点で難しい判断を迫られているのが現状のよう。
また2024年には新紙幣が発行されることも、事業者の頭を悩ませています。新紙幣が発行されたタイミングでの交換のほうが負担は少ないと考え、今回の新500円玉対応を見送る業者も多いのです。
【2】半導体不足
新500円玉への対応が進まないもうひとつの要因が、世界的な半導体不足です。半導体はパソコンやスマートフォンなどコンピューターを動かすために欠かせないものですが、近年、コロナ禍の巣ごもり需要の増加などによって2021年夏ごろから世界的に不足し始めました。そのため必要な部品を輸入できないなど、機器メーカーが大きな影響を受けているのです。
実はコインセレクター内部にある識別センサーにも半導体が使われています。しかしこの世界的な半導体不足の影響から、たとえ新機種を注文しても製造・出荷に数ヶ月かかる場合があり、これが新硬貨への対応の遅れにつながっているのです。
まだまだ出番が少なそうな新500円玉。とはいえ、最新技術を詰め込んだその精巧な作りは、さながらアート作品のようでもあります。もしも手元にあったら使えるようになるその日まで、その緻密なデザインをゆっくり鑑賞するのもいいかも(?)しれません。
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