片麻痺の母と多忙な娘、荒れた部屋での現実|介護現場からのSOS

お悩み

1. はじめに

  • 介護現場で実際に起きている「支援が届かない家庭」の話

2. ゴミ屋敷化する家と、犬の異常な状態

  • 犬の皮膚病と、部屋中に広がる糞尿

  • 「生活環境」として成立しない現状

3. 片麻痺の母と、多忙すぎる娘

  • 掃除もままならない身体状況

  • 娘との連絡が取れない日々

4. 何度も提案しているヘルパー支援

  • 支援の必要性と、家族からの無反応

  • 利用者さんの「娘を責めないで」という想い

5. 崩れかけている福祉サービスの利用状況

  • デイケアの中断と未納問題

  • 福祉用具の未払い・他事業所からの撤退

6. 僕が行政へ通報を迷う理由

  • 最初に出会った時の「信頼」

  • 崩したくない“生活”と“関係”

7. 今も、連絡を待っている

  • 信じたいという想い

  • 現場でできる支援とは何か?

8. おわりに|支援につながらない家族を、どう支えるか

  • 制度の限界と、現場の葛藤

  • 「信じる」という最後のよりどころ

毎回訪問するたびに、心がざわつく。
部屋の中は、日に日にゴミが増え、空気はどこか淀んでいる。

飼われている小型犬は、皮膚病が進行していて、首から上とお尻の下にしか毛が生えていない。
床には、犬の糞とおしっこがあちこちに点在し、それを踏まないように歩くのが難しいほどだ。

この家の利用者さんは片麻痺があり、掃除ができない。
同居する長女さんは仕事で多忙を極めていて、こちらからの連絡にもなかなか応じてくれない。

僕は何度も、ヘルパー支援を提案してきた。
でも、返事はこない。

「娘は忙しいの。借金もあって…」
申し訳なさそうに、そうつぶやくお母さん。
でも、今のこの状態は、人が安心して暮らせる環境ではない。

かつて通っていたデイケアも、いつの間にか辞めてしまった。
利用料は未納のままで、借りていた福祉用具のレンタル費も払われていない。
他の事業所からも「対応できない」と連絡が入り、正直、僕ひとりの力ではもうどうにもならない。

包括支援センターに報告しなければならない期限が、もうすぐそこまで迫っている。


でも――
どうしても思い出してしまうのは、最初に伺った日のことだ。

そのときの部屋はきれいで、娘さんは江戸っ子のような歯切れのいい口調で話してくれた。
まっすぐで、芯が強そうで、悪い人には見えなかった。
お母さんも、根は優しく、真面目な人なのだと思う。

だからこそ、僕は“大ごと”にはしたくない。
行政に報告すれば、きっと何かが大きく動く。
でもそれは、二人の生活を壊してしまうかもしれない。

できることなら、自分たちの力で立て直してほしい。

僕は何度も電話をかけている。
返ってくるのは、留守番電話ばかり。
ショートメールも何通も送った。

たまに返ってくる短いメッセージ。
「今、ゴタゴタしていて…」
「ヘルパーのことも考えてます」

その言葉を、信じたい。
今も、僕は連絡を待っている。

信じている僕が、ここにいる。



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