先日、マッサージの仕事で、比較的若い患者様を担当しました。
年齢はおそらく30代、もしくは40歳前後ではないかと思います。
施術前に、
「今日は腰と背中が張っているので、よろしくお願いします」
といった訴えがありました。
そこで、まずは腰や背中だけを見るのではなく、全身の動きを確認していきました。
全体的には身体の動きは良かった
比較的若い方ということもあり、筋肉はしなやかでした。
骨盤の動きも全体的に大きな制限はなく、身体の柔軟性も悪くない印象です。
しかし、左右差を見ていくと、少し気になる点がありました。
右側の仙腸関節周囲の動きが、左側と比較するとやや悪いように感じられました。
また、右下肢の筋力も、左側より少し弱いような印象がありました。
もちろん、施術中の触診や動作確認による私自身の主観的な評価です。
この時点で、
「右の仙腸関節が悪いから、右脚が弱い」
と断定することはできません。
ただ、
- 右側の骨盤周囲の動きに左右差がある
- 右下肢の筋力に左右差がある
- 右側の背中に強い筋緊張がある
という点は、身体の使い方を考えるうえで気になりました。
腰は施術をすると比較的ほぐれていった
まず、訴えのあった腰部を施術していきました。
腰の筋肉には張りがありましたが、施術を続けていくと、比較的ゆっくりと緩んでいきました。
しかし、背中は少し違いました。
背中全体に硬さがあり、特に右側には、筋肉が筋張ったような強い緊張がありました。
その部分は、腰に比べてなかなか緩みにくい印象でした。
特に気になったのは右側の胸椎から上位腰椎付近
今回、特に気になったのは、右側の背中です。
おおよそ胸椎3~4番付近から、下方にかけて、右側の筋肉に硬さがありました。
腰椎の上部付近まで続くような、縦方向からやや斜めに走る筋張った硬さです。
触診すると、単に「背中全体が凝っている」というよりも、ある部分に筋肉の緊張が集中しているように感じました。
この部位には、脊柱起立筋群の一部である腸肋筋や最長筋などが関係している可能性があります。
ただし、実際の身体では、一つの筋肉だけが単独で硬くなるとは限りません。
脊柱起立筋群、胸腰筋膜、肋骨周囲の筋肉、肩甲骨周囲の筋肉などが複合的に関係している可能性もあります。
なぜ右側の背中だけが硬くなったのか?
ここからは、今回の身体の状態から考えた仮説です。
右側の骨盤周囲の動きに左右差があり、右下肢の筋力も左側より弱いように感じられました。
一方で、右側の背中には強い筋緊張がありました。
このことから、
「右下肢や骨盤周囲の機能的な左右差を、右側の体幹筋が補っているのではないか」
と考えました。
例えば、
右下肢や股関節が身体を支える働きを十分に発揮できていない。
↓
骨盤や身体を安定させるために体幹の筋肉が頑張る。
↓
右側の背中の筋肉が持続的に働く。
↓
結果として、右側の背中に慢性的な筋緊張が生じる。
このような流れです。
もちろん、実際には、
- 姿勢
- 仕事での身体の使い方
- 運動習慣
- 過去のケガ
- 睡眠
- ストレス
など、さまざまな要因が関係している可能性があります。
したがって、今回の施術だけで原因を断定することはできません。
しかし、
「なぜ、この場所だけが硬くなっているのだろう?」
と考えることは、施術をするうえで非常に大切だと思います。
「痛い場所」と「原因となっている場所」は違うかもしれない
患者様は、
「腰が張っています」
「背中が凝っています」
と訴えられます。
もちろん、その部分を施術することは大切です。
しかし、患者様が症状を感じている場所が、必ずしも身体の問題の出発点とは限りません。
例えば、
- 股関節の動きが悪い
- 足の筋力に左右差がある
- 骨盤の動きに左右差がある
- 胸椎が動きにくい
- 肩甲骨がうまく動いていない
- 姿勢を維持する筋肉に負担が集中している
といったことが原因となり、結果として腰や背中に張りを感じている可能性もあります。
今回の患者様も、最初の訴えは「腰と背中の張り」でした。
しかし、実際に全身を確認していくと、私がより強く気になったのは、右側の背中の筋緊張でした。
さらに、右側の骨盤周囲や右下肢にも左右差があるように感じられました。
身体は、足、骨盤、背骨、肩甲骨などがそれぞれ独立しているわけではありません。
一つの部分の動きが変わることで、別の部分に負担がかかることがあります。
今後、さらに確認してみたいこと
もし次回も担当する機会があれば、以下のような点を確認してみたいと思います。
- 片脚立位で左右差があるか
- 右股関節の動きに制限があるか
- 右臀部の筋力が弱くないか
- 胸椎の回旋に左右差があるか
- 肩甲骨の動きに左右差があるか
- 深呼吸時の肋骨の動きに違いがあるか
- 日常生活や仕事で、どちら側に負担をかけているか
特に、右下肢の筋力が本当に弱いのか。
もし弱いのであれば、
「どの動きで弱さが出るのか」
を確認することが重要だと思います。
右脚全体が弱いのか。
お尻の筋肉が弱いのか。
股関節を動かす筋肉が弱いのか。
膝や足首に問題があるのか。
それによって、身体の見方は変わってきます。
今回の施術を振り返って
今回の患者様は、「腰と背中が張っている」という訴えでした。
腰は施術を続けることで比較的ほぐれていきました。
一方で、右側の背中には強い筋緊張があり、なかなか緩みにくい部分がありました。
さらに、右側の骨盤周囲の動きや、右下肢の筋力にも左右差があるように感じられました。
そこから、
「右側の下肢や骨盤周囲の機能的な左右差を、右側の体幹筋が補っているのではないか」
という仮説を立てました。
もちろん、これはあくまで施術中の観察から考えた仮説です。
身体の状態を正確に判断するためには、より詳しい評価が必要です。
それでも、一人の患者様の身体を観察し、
「なぜこの筋肉が硬いのか?」
「なぜこちら側だけなのか?」
「この筋肉は何を補っているのか?」
と考えていくことは、施術の面白さの一つだと思います。
単に硬い筋肉を揉みほぐす。
それだけではなく、
身体全体の動きの中で、なぜその筋肉に負担が集中しているのかを考える。
これからも、そういう視点を大切にしながら、患者様の身体を見ていきたいと思います。



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