認知症の人が「嫌だ」と言ったら、すべてやめるべきなのか?ケアマネが考える「本人の意思尊重」と支援の難しさ

福祉・医療

「デイサービスには行きたくない」

認知症の方から、そう言われることがあります。

今回、担当しているアルツハイマー型認知症の方も、デイケアやデイサービスの利用を嫌がっていました。

身体的には比較的よく動ける方です。

しかし、認知症の進行に伴い、活動する意欲が少しずつ低下しているように感じられます。

今後の身体機能を維持するためにも、リハビリテーションや他者との交流は必要ではないかと考えています。

ご家族も「できればデイケアに行ってほしい」と希望されています。

しかし、ご本人はこう言われます。

「私はまだそんなおばあちゃんじゃない」

「デイサービスなんて嫌」

お気持ちは分かります。

でも、ケアマネジャーとしては、こう思ってしまうこともあります。

「一回だけでも、行ってみたらいいのに……」

認知症の方は「嫌だ」と言っても、実際には受け入れられることがある

この方は、訪問系のサービスも最初は拒否されていました。

「嫌だ」

「そんなの必要ない」

そう言われることもありました。

しかし、実際に訪問看護などのサービスが始まると、支援者を受け入れ、普通に会話をされます。

そして、送迎車が来れば、意外とすんなり車に乗ることも十分に考えられます。

認知症の方の場合、「嫌だ」と言ったからといって、必ずしも「絶対に利用できない」という意味ではないことがあります。

その時の気分や不安、先入観から拒否されているだけの場合もあります。

実際に始まってみると、案外楽しく過ごされることもあります。

見学に行ったことで、逆に拒否が強くなることもある

ご家族は、まず施設を見学させようと考えました。

これは非常に自然な考え方です。

本人に納得してもらってから利用してもらいたい。

できるだけ嫌な思いをさせたくない。

そう考えるのは当然です。

しかし、認知症の方によっては、見学そのものが「自分をこんな場所に連れてきた」と感じられてしまうことがあります。

「私はこんなところに来るような人間ではない」

「こんなところに入れられるのか」

そんなショックを受けてしまうこともあります。

そして、見学したことで、かえって拒否感が強くなる場合もあります。

だから私は、場合によっては見学よりも「まずは一度体験してみる」という方法もありなのではないかと思っています。

「本人の意思を尊重する」とは、何もしないことではない

介護では、「本人の意思を尊重する」ということが非常に大切です。

もちろん、本人の気持ちを無視してはいけません。

しかし、認知症の方が「嫌だ」と言ったからといって、すべてそこで終わりにしてしまってよいのでしょうか。

例えば、アルツハイマー型認知症が進行し、活動量が低下している方がいるとします。

本人は「リハビリなんて嫌だ」と言う。

しかし、何もしなければ、さらに身体機能が低下する可能性がある。

他者との交流がなくなれば、ますます外出する機会も減ってしまう。

このような場合、本人の「嫌だ」という気持ちだけを優先することが、本当に本人の利益になるのか。

私は、そこには難しい問題があると思っています。

本人の意思を尊重することと、本人にとって必要な支援を提供すること。

この2つは、いつも完全に一致するわけではありません。

認知症の方への支援は「一歩進めてみる」ことも必要

もちろん、無理やり何でもやればいいという話ではありません。

本人が強い苦痛を感じている場合や、明らかに危険がある場合には、当然慎重に考える必要があります。

ただ、本人がその場の感情で「嫌だ」と言っているだけであれば、一度経験してもらうことも選択肢だと思います。

例えば、

「とりあえず一回だけ行ってみましょう」

「嫌だったら次はやめましょう」

「今日は体験だけにしてみましょう」

という形です。

実際に行ってみると、思ったより楽しかった。

スタッフと話をしているうちに、自然と時間が過ぎた。

帰宅してからは、そもそも行ったこと自体を忘れている。

認知症の方への支援では、そういうこともあります。

だからこそ、最初から「本人が嫌と言ったから、すべてやめる」と決めてしまうのは、少しもったいないように感じます。

ご家族も「本人のために」と悩んでいる

今回の息子さんも、お母さんのことをとても心配されています。

だからこそ、お母さんが「嫌だ」と言うと、その気持ちを尊重しようとされます。

その優しさは、とても大切なことです。

一方で、認知症の方の介護では、ご家族がすべて本人の言う通りに対応していると、なかなか必要な支援につながらないこともあります。

認知症の方の「嫌だ」という気持ちを受け止めながらも、

「本当にそれが本人の望んでいる生活なのか」

「今後の生活を考えたときに、必要な支援ではないか」

という視点も必要になります。

ここが、ご家族にとっても、ケアマネジャーにとっても難しいところです。

「本人の意思尊重」と「必要な支援」のバランス

認知症の方への支援に、正解はありません。

本人の意思を尊重する。

でも、必要な支援にはつなげていく。

そのバランスを考えることが、ケアマネジャーの仕事の一つだと思います。

「嫌だ」と言われたから、すべてやめる。

反対に、「必要だから」と無理に進める。

そのどちらも、必ずしも正解ではありません。

本人の状態、ご家族の思い、今後の生活、そして支援の必要性。

それらをすべて考えながら、時には少しだけ背中を押してみる。

そして、実際にやってみた結果を見て、また考える。

認知症の支援では、そんな柔軟な対応が必要なのかもしれません。

今回のケースでも、私は心の中で何度も思っています。

「もう、見学だけで終わらせずに、一回やってみたらいいのに」

もちろん、ご本人の気持ちを無視するつもりはありません。

でも、必要な支援まで「嫌だ」の一言で止まってしまうのは、やはり少し違う気がします。

認知症の方の「嫌だ」を尊重しながらも、その先にある「本当は必要な支援」にどうつなげていくのか。

それを考え続けることも、ケアマネジャーの大切な役割なのだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました